応接セットの張り替え作業
今では見かけることが少なくなりましたが、クッション材にワラと芝草・コイルバネが使われている約50年前に造られた応接セットです。
実際に座ってみると、体が沈み立ち上がるのが大変なくらいクッション性が失われていました。
このような椅子も、中からしっかりと直し布地を張替えると新品同様に生まれ変わります。
できるだけ昔と同じように、自然の材料を使い手作業で仕上げていきます。
張り生地を剥がす
-----手仕事道具のひとつ-----
右から3つ目のマグネットハンマー
【椅子張り職人専用の金づち】
張り地などを手で引っ張りながら、口にくわえた釘を磁石になっている金づちの頭に付けて打ち込むことができる。
埃を取りながら木部だけにします。
詰め物の芝草を再利用するため、ほぐしながら風を通し天日干し
下地をつくる
バネを支える“力布(りきふ)”というテープ状の麻織物を格子状に張り、
コイルバネを“ばね糸”で縦・横・斜めとしっかりと固定します。
麻布をバネの上に被せ、
釘とセール糸でとめていきます。
* ばね糸 …主にバネを吊るときに用いる麻繊維を太く撚った蝋引き糸
* セール糸 …土手を固くしたり(土手差し)、バネの止め縫い、詰め物の閉じ縫いに用いる蝋引き糸
土手をつくる
土手を固くするためセール糸で刺していきます。“二段ざし”
背の土手には“長ワラ”を使います。
土手積の完成です!
* 土手(土手積み)…座や背の縁や角の形を整えるための工法。椅子張り作業の最も重要な技術の一つ。
下張りをする
黒綿、ウレタン材を使いクッション性を良くします。
全体に白綿を被せ、白布(金巾)で下張りをします。
全体の80%が仕上がりました。
* 金巾(かなきん)…薄地で広幅の綿布。
上張りをする
パーツごとに生地を裁断します。
上張りは、
座→背→肘→肘外側→背裏→底張りの順に進めます。
上張りの途中経過(左)
下張りの状態(右)
* 底張り …椅子の裏底面に金巾などを釘止めすること。(詰め物やバネからの埃が落ちないように)
完成です!
張替え前と比べて明るいイメージになり、コイルスプリングならではの座り心地を活かした仕上がりに。
ハンマーを使った釘打ちに変わり、今ではエアタッカーでの作業。クッション材にはウレタン素材を使うなど作業方法も昔とは違いますが、その時代に作られた椅子はまた昔のように元の材料や技術で快適な椅子に仕上げることができます。
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